日本原子力学会 理事会

(1)総括
・廃炉の円滑な遂行と地元産業の再生・コミュニティの復興を総合的に推進することを優先し、現状を継続して復興作業を遅延させないことが重要であると考える。現存する処理の海洋放出が実行可能でリスクが少ない選択であることから、日本原子力学会(以下、「本会」)は、海洋放出処分のすみやかな実施を提言する。
・放射線安全と公衆の健康、環境影響、社会との関係の観点を考慮し、本会は、専門的な知見を提供・発信するとともに、工学的ならびに社会的課題の解決に向けて、海洋放出処分に関するさまざまな取り組みに協力する。

(2)長期的かつ総合的な廃炉戦略の構築
・数十年にわたる廃炉およびその後の廃棄物管理において、汚染処理は引き続き発生する。したがって、長期的かつ総合的な視点をもって廃炉戦略を構築することが必要である。
・海洋放出する処理の放射能濃度と量は、長期的かつ総合的に実行可能な準とする必要がある。放出放射能の濃度と総量、放出の場所・時期、放出方法、検証方法について、影響のモニタリングや監視、技術的評価を継続し、その結果をもとに改善する必要がある。

(3)地域・社会のご理解と風評被害
・海洋放出についての社会の合意形成は特に重要な課題であると認識する。風評被害を最小化するために地元ならびに社会との相互理解に向けた努力が不可欠である。このために、放出核種、放射能の濃度及び量、その時間変化のデータ、および予想される環境影響について透明性をもって提示し続ける必要がある。さらに、地元の意見を良く聴き、それを適切に反映するしくみが必要と考える。

(4)最新の科学的知見の反映
・本会は、原子力工学、放射性核種の環境挙動、放射線の生物影響、はもとより、風評被害の問題やリスクコミュニケーションなどの社会科学分野の問題にも取り組み、最新の成果を発信する。
・上記の取り組みにあたって、国際的関心が高いことを踏まえ、国内だけでなく海外の協力関係にある学会と連携する。

【ウェビナー開催】
日本原子力学会と福島復興・廃炉推進に貢献する学協会連絡会(ANFURD)は、東京電力福島第一原子力発電所ALPS処理の処分に関するウェビナーを開催いたしました。

日時:2021年6月12日(土)9:30~11:20
Zoomウェビナーによるオンライン開催
プログラム:
(1)ALPS処理の処分に関する基本方針について
資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室長  奥田修司氏(40分)
(2)東京電力HD福島第一原子力発電所ALPS処理の処分に関する日本原子力学会の見解
日本原子力学会長  中島 健(15分)
(3)資源エネルギー庁方針を受けた海中放射性核種分布の将来予測解析
日本原子力研究開発機構  町田昌彦氏(20分)
(4)資源エネルギー庁から公表された風評被害対策に対する社会科学者からの見解
筑波大学  五十嵐泰正氏(20分)
(5)質疑応答(15分)

お問い合わせ:
日本原子力学会 事務局
E-mail: kikaku@aesj.or.jp